売却前にインスペクションは必要?メリット・デメリットと注意点とは?

物件を買主に引き渡す前には、建物の健康診断をしておくと安心です。
売買契約が円満に終了しても、買主が住み始めてから物件に不具合が見つかり、
揉めごとに発展してしまうケースがあるためです。
今回は、建物の健康診断であるインスペクション(既存住宅状況調査)について、
そのメリット・デメリット、注意点などを解説していきます。
建物を専門家に調査してもらい、どういう状態であるのかを取引前に明らかにすることで、
契約後の予期せぬトラブルを回避しましょう。

目次

  1. 1. インスペクションとは?「家の健康診断」でモヤモヤを解消
  2. 2. メリット
  3. 2-1. 売却後にトラブルのリスクを減らせる
  4. 2-2. 他の物件と差別化でき、選ばれやすくなる
  5. 2-3. 不当な値引きに応じないで済む
  6. 2-4. 選択肢が増え、売却戦略が立てやすくなる
  7. 3. 知っておきたいデメリット
  8. 3-1. 費用がかかる
  9. 3-2. 時間がかかる
  10. 3-3. 不具合が見つかる可能性も
  11. 4. 注意点
  12. 4-1. インスペクションを実施したからといって、契約後のリスクが必ずゼロになるわけではない
  13. 4-2. 紛らわしいサービスが出回っている
  14. 5. Q&A
  15. 6. まとめ
  16. 7. 関連URL


インスペクションとは?
「家の健康診断」でモヤモヤを解消

インスペクションを一言でいうと、「中古住宅の健康診断」です。

建築士の中でもさらに専門の講習を修了した既存住宅状況調査技術者が、普段は見ることのない屋根裏や床下、外壁のひび割れなどを客観的にチェックします。
「見た目はきれいだけど、中身は大丈夫かな?」 「もし大きな欠陥が見つかったら、もう売れないんじゃないか…」そんな漠然とした不安を抱えたまま売却活動を始めるのは、とてもストレスがかかりますよね。そういった時に役立つのがインスペクションです。

建物の現状を正しく把握し、調査結果を買主と共有することで、お互いに納得・安心して取引できるようになります。

インスペクションでわかる範囲

インスペクションでは、雨漏り・白アリによる腐食・家の傾きといった性能的な欠陥を調べます。
建物の構造や雨漏りに関する基本的な部分を調べるため、屋根・壁・床・ドア・窓・柱・梁・土台・基礎などが調査対象となります。
ただし、下記は調査対象外となるので注意しましょう。

住宅設備(インターフォン、エアコン、給湯器、浴室乾燥機など)
シロアリそのものの有無
通電や給排水管の詰まりの確認
耐震性の診断


※売主は住宅設備について、インスペクションとは別に「付帯設備表」で買主に告知します。
また、シロアリによる腐食や水漏れの有無、震災リスクの推測などはインスペクションの調査範囲になることがあります。


メリット

インスペクションのメリットには、次のようなものがあります。

売却後にトラブルのリスクを減らせる
他の物件と差別化でき、選ばれやすくなる
不当な値引きに応じないで済む
選択肢が増え、売却戦略が立てやすくなる

1つひとつ詳しく見ていきましょう。

売却後にトラブルのリスクを減らせる

もしかしたら建物の引き渡しが終わって新生活が始まった頃に、買主から「雨漏りがしている!修理費を払ってほしい!」というような連絡が来るかもしれません。

しかし事前にインスペクションを行って建物の不具合を開示しておけば、こうした「売却後のトラブル(契約不適合責任)」のリスクを大幅に減らすことができます。
契約不適合責任に関して、詳しくはこちらをご参照ください。

コラム 【#27 契約不適合責任とは?不動産売却前に知っておくべき注意点と対策】
https://www.living-life.co.jp/kodate/sell/column/detail27.php
古くても他の物件と差別化でき、選ばれやすくなる

買い手側は非常に慎重です。
似たような条件の家が2つ並んでいた時、片方が「専門家の検査済み」で、もう片方は「状態がよくわからない家」だったら?
きっと「安心感」という付加価値がある方を、検討の土俵にあげるのではないでしょうか。

例えば、築30年の物件だと「建物価値ゼロ」とみなされ、解体して土地として売るよう勧められることもあります。 しかし、インスペクションで「構造がしっかりしている」と判明すれば、中古住宅として付加価値をつけて売るという選択肢が生まれます。

ここで、築年数別にインスペクションの目的を表1.にまとめました。
皆さまの物件はどこに当てはまりますか?

表1. 築年数別インスペクションの目的とアピールポイント
築年数 インスペクションの主な目的 買主へのアピールポイント
~10年 コンディションの良さの証明 「新築同様」という安心感
~20年 税制優遇(瑕疵保険)の活用 「住宅ローン控除」が使えるお得感
~30年 構造の安全性の確認 「リノベ向き」という素材の良さ
30年以上 トラブル防止・告知義務の整理 「納得感」のある現状渡し

このように、インスペクションを実施すると買主へのアピールポイントが明確になり、他の物件と差別化できるため、結果として選ばれやすくなります。

不当な値引きに応じないで済む

「古いから、なんとなく100万円安くして」という根拠のない値引き交渉に悩まされる売主は少なくありません。
検査結果という「プロの証明書」があれば、不当な値引き交渉時にも「建物の状態は良好なので、この価格が適正です」と自信を持って交渉できます。

択肢が増え、売却戦略がたてやすくなる

インスペクションは「建物を壊して売る(土地のみ)」か「建物を直して売る(建物+土地)」かの判断基準としても活用できます。
例えば、築30年であると「建物価値ゼロ」とみなされ、解体して土地として売るよう勧められることもあります。 しかし、インスペクションで「構造がしっかりしている」と判明すれば、中古住宅として付加価値をつけて売るという選択肢が生まれます。


知っておきたいデメリット

インスペクションのデメリットには、次のようなものがあります。

費用がかかる
時間がかかる
不具合が見つかる可能性も

1つひとつ詳しく見ていきましょう。

費用がかかる

「インスペクションって結局いくらかかるの?」というのは、最も気になるポイントですよね。

調査費用の相場は、建物の規模・構造や依頼業者によっても異なりますが、一般的な木造戸建て住宅(延床面積120 m2程度)では5万円~8万円ほどです。
マンションは調査範囲が狭いため、もう少し安くなるでしょう。

基本診断は「目に見える範囲」が中心ですが、より買い手に安心を届けたい場合は、以下のような詳細調査を追加することも可能です。

床下・屋根裏への進入調査: +2万〜3万円 (シロアリ被害や雨漏りの形跡をより深く確認)
配管のカメラ調査: +1万〜2万円 (古い家で気になる「水の詰まりや漏れ」を確認)

相場を知っておき、無理のない資金計画を立てましょう。

時間がかかる

調査期間は、依頼から実施までが1週間・実施から報告書を受け取るまでが1週間、合わせて2週間ほどが目安となります。

調査当日は立ち会いをするのが一般的です。
実施時間は1~3時間ほどをみておくとよいでしょう。

不具合が見つかる可能性も

インスペクションを実施した場合、安心材料だけでなく逆に不具合が見つかることも考えられます。

その場合は次のようなリスクが生じます。

そのまま売るなら、買主からの値引き交渉の材料になる
補修するなら、追加の出費が発生する

こういったリスクを抱え込まないように、不具合があったら隠しておこう、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしインスペクションを行うと、データの良し悪しに関わらず、買主に重要事項説明として結果を報告することが義務づけられています。

参照: 国土交通省「改正宅地建物取引業法の施工について」
https://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf

「隠したまま売って後から訴えられるリスク」と「先に見つけて正直に伝えて売る安心」、どちらが大切でしょうか。
不具合が先に分かっていれば、「その分、少し価格を下げて売り出す」といった戦略も立てられます。インスペクションのことは、後出しジャンケンをして不利になってしまわないための防衛策だと考えてみてください。


注意点

インスペクションを実施する際は、次の点に気をつけてください。

インスペクションを実施したからといって、契約後のリスクが必ずゼロになるわけではない
紛らわしいサービスが出回っている

1つひとつ詳しく見ていきましょう。

インスペクションを実施したからといって、契約後のリスクが必ずゼロになるわけではない

インスペクションは、基本的に「目視(目で見る)」を中心とした非破壊検査です。
壁を剥がしたり、家具をどかしたりして調べるわけではないため、壁の内部や床下の隅々まで100%把握できるものではありません。
あくまで「現時点で確認できる範囲の専門家診断」であることを理解しておきましょう。

絶対的な効果があるわけではないならインスペクションをしなくてもいいかな、と思った方。
もし契約後にトラブルが生じても、事前に調査をしたという事実があれば、売主の誠実な対応を示す証拠となります。インスペクションをしておけば問題解決を有利に進められるでしょう。

紛らわしいサービスが出回っている

あたかも正式なインスペクションであるかのように、類似のサービスが提供されていることがあるので注意しましょう。

宅地建物取引業法で定められた正式なインスペクション(既存住宅状況調査)を行えるのは、国土交通省の登録講習を修了した建築士である「既存住宅状況調査技術者」だけです。

特に「既存住宅売買瑕疵保険」に入る場合は、既存住宅状況調査技術者の調査でないと加入できないため確認が必須となります。


Q&A
Q  インスペクションは売主の義務なのですか?

A

いいえ義務ではなく、あくまで任意です。
インスペクションをするかどうかは、先ほどご紹介したメリットとデメリットを天秤にかけ、ご自身や物件の状況と照らし合わせて慎重に判断しましょう。

Q  天井裏や床下などを調査する際はどうやって調査するのですか?
壊したり穴を開けたりしないか心配です。

A

調査は基本的に目視や機器による計測です。
天井裏や床下には、点検口から入り込んで調査をします。
機器を使う計測も、レーザーで床や柱の傾きを計測する、含水率計で腐食を調べる、打診棒で音の違いから壁の状態を確認する、赤外線サーモグラフィーで表面温度から雨漏りや断熱材の様子を探る、というように非破壊で行われます。
インスペクションを行うことによって、天井や床・壁を壊したり穴を開けたりすることはありませんので、ご安心ください。

Q  インスペクションの実施タイミングはいつですか?

A

「不動産会社と媒介契約を結んだ後」で、「売却活動を始める前」がベストです。
事前に調査を済ませておくことで、その結果をアピール材料として使えます。
また、もし調査で不具合が見つかった場合は、売却活動を始める前に対応を検討できます。

Q  インスペクション当日までに準備しておくことはありますか?

A

当日までに、次の点に関して準備しておきましょう。
・天井裏や床下の点検口周りを片付けておく
・建物の設計図やリフォーム履歴などの書類を用意しておく
・空き家の場合は電気・水道を使えるようにしておく

Q  インスペクションで当日の立会いは必要ですか?

A

義務ではありませんが、できるだけ立ち会った方がよいでしょう。
専門家から建物の状況について説明を受けたり、疑問点をその場で聞くことができたりする貴重な機会です。
買主からの質問に備えるためにも、物件の状況を把握しておくと安心です。

Q  既存住宅状況調査技術者とは、どういう人をいうのですか?

A

既存住宅状況調査技術者とは、既存住宅状況調査技術者講習を受けて修了した建築士のことです。
2017年(平成29年)2月に創設された国土交通大臣による国家資格であり、「一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会」が各都道府県の建築士事務所協会にて講習を開催し、修了した建築士を登録します。

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会「既存住宅状況調査技術者」:
https://www.njr.or.jp/inspection/

Q  既存住宅売買瑕疵保険とは、どういった保険ですか?

A

既存住宅売買瑕疵保険とは、中古住宅の売買時に「構造耐力上主要な部分」や「雨水の浸入を防止する部分」などのインスペクションの対象範囲に瑕疵(欠陥)が見つかった場合に、補修費用が支払われる保険です。
インスペクションの実施とセットになった保険であり、加入しておくと万が一契約不適合責任を問われても補修費用を保険でカバーできるため、安心して中古住宅を売却できます。

Q  補助金などはありますか?

A

県や市などの各自治体において、インスペクションに対して独自の補助金制度を設けていることがあります。 下記サイトで調べられるので、要件や期間などが該当しているか確認してみましょう。

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会「既存住宅状況調査 補助金一覧」:
https://www.njr.or.jp/inspection/subsidy/01786.html

まとめ

今回は、インスペクションのメリット・デメリット、注意点などを解説いたしました。
2020年4月の民法改正により、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと変わったことで売主の責任範囲が広がりました。
そのため、不動産売買においてトラブルから身を守る有効な手段としてインスペクションの重要性が高まり注目されています。

不動産売却において、最も大切なのは「買主様の不安を取り除き、あなた自身のリスクをゼロにすること」です。インスペクションを上手に活用することで、自信を持って大切な我が家を次の方へ引き継ぐことができます。皆さまも、リスク管理の一環として活用してみてはいかがでしょうか。リビングライフは1990年の創立以来、「住まいから始まる幸せの生涯設計を提案する」という理念を掲げ、お客さまと共に歩んでまいりました。これからも不動産売買・賃貸の仲介や節税・資金計画へのアドバイスなど、不動産についてのサポートを通じて皆さまに寄り添い、ニーズに応えられるような会社を目指していきます。
大田区・品川区を中心とした東京城南エリア、川崎市・横浜市を中心にした神奈川エリアでサービスを提供いたしておりますので、是非いつでもお気軽にご相談ください。

関連URL

民法:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089

国土交通省「改正宅地建物取引業法の施工について」:https://www.mlit.go.jp/common/001201151.pdf

国土交通省「既存住宅インスペクションガイドライン」:https://www.mlit.go.jp/common/001001034.pdf

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会「既存住宅状況調査技術者」:https://www.njr.or.jp/inspection/

一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会「既存住宅状況調査 補助金一覧」:https://www.njr.or.jp/inspection/subsidy/01786.html

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