空き家を放置しておくと税金が6倍に?!

近年、空き家は増加の一途をたどり社会問題になっています。
国土交通省によると、1998年に180万戸だった空き家の数は 2018年には350万戸まで増え、2030年には470万戸ほどにまでなると予想されています。空き家が増えると周辺環境に様々悪影響があるため政府は空き家対策を強化しており、その結果空き家を放置したままの所有者にはペナルティが課せられることがあります。そこで今回は、空き家を放置しておくと持ち主にどのようなデメリットが生じるのか、デメリットを回避するにはどうしたらよいかについて解説していきます。うっかり空き家を放置しておいて損をしてしまわないように、税制の仕組みを押さえておきましょう。

空き家を放置するとデメリットばかり!

まずは、空き家を放置しているとどんなデメリットがあるのかを確認していきましょう。
誰も住んでいない家を管理しないまま放置していると、次のようなデメリットが生じます。

1税金がかかり続ける
2資産価値が低下する
3近隣の住民に迷惑がかかる

1つひとつ詳しく見ていきます。


1税金がかかり続ける

不動産には毎年固定資産税と都市計画税がかかります。
この2つは例え誰も住んでいなくても建物の所有名義人に課せられるため、空き家であっても支払わなければなりません。
固定資産税と都市計画税の税額は、それぞれ次の式で計算します。

例えば、固定資産税評価額が3,000万円の物件だとしたら、

合計50万円ほど

の税金を支払わなければなりません。
誰も活用していないのに、毎年50万円ほども取られるのは手痛い出費ですよね!

2資産価値が低下する

家を放置していると資産価値が目減りしていき、いざ売却しようとしてもその時には廉価でしか売れなくなってしまいます。
建物は経年によって徐々に劣化していくため、家の資産価値は古くなればなるほど低くなるからです。
家に誰も住まなくなったら放置せずに、早めに処分してしまうことが大切です。

3近隣の住民に迷惑がかかる

空き家を放ったままにしておくと、近隣の住民に次のような迷惑をかけることがあります。

◯ 空き家周辺の治安が悪くなる
◯ 空き家が倒壊などして危険
◯ 景観が悪くなる
◯ 悪臭や害虫、害獣がわく


空き家は放火や違法な物の隠し場所として利用される可能性があり、犯罪の温床にもつながりかねません。
また、ガラの悪い集団が空き家に目を付けて忍び込み、溜まり場にすることもあります。例え実害がなくても、怪しい集団がうろついているだけで住民の不安も増すでしょう。
また、放置された家が風雨にさらされて修繕されずにそのまま朽ちていくと、壁の倒壊や屋根の落下、ガラスの飛び散りなどがあって危険です。通行している人に怪我をさせたら、所有者の管理責任が問われるでしょう。
周辺が洗練された街並みでも、朽ちかけたボロボロの家や荒れ放題の庭が1軒あるだけで景観が台無しになってしまいます。
周囲への景観にも配慮して、家や庭の外観にも気を配るように努力しましょう。
管理されてない家は、食べ物の残りやゴミが散乱したまま放置され、悪臭や害虫・害獣がわく恐れがあります。
匂いが広範囲に漂ったり、害虫や害獣が徘徊して周辺にまで被害が及びます。
このように、空き家の管理や処分が面倒だからといって放置しておくと有害無益です。
空き家を所有したらきちんと管理するか、できなければ早めに対策をして荒れたまま放置しておくことは避けましょう。


空き家と税金

空き家を放置していると税金がかかり続けることは先に述べましたが、場合によっては税金が今までの6倍の額になることをご存知でしょうか。
一体何故?6倍になったらどうしよう?!と思った方。
どういった時にどうして6倍になるのか、詳しく解説していきますのでご安心ください。

1「特定空き家」「管理不全空き家」認定で固定資産税が6倍、都市計画税が3倍に!

住宅用の土地には通常、固定資産税と都市計画税に対して表1.のような軽減措置が適用されます。(国土交通省「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」より)

表1. 住宅用地への税金軽減措置
固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地(200m2以下) 評価額1/6 評価額1/3
一般住宅用地(200 m2超え) 評価額1/3 評価額2/3

面積180 m2の住宅用地で固定資産税評価額が3,000万円の物件を考えると

合計10万円ほど

これは、住宅用地の税金軽減措置を適用しない場合の

合計50万円ほど

と比べると40万円もお得になります。

しかし、この税金軽減措置が適用されるのはあくまで住宅用地の場合です。
空き家が建っている土地は住宅用地とはみなされず、この適用が受けられません!
その結果、土地の固定資産税が最大6倍・都市計画税が最大3倍になってしまうのです。
ただし、空き家と一口に言っても様々な状態の空き家があります。
土地が住宅用地としてみなされない空き家は、「特定空き家」や「管理不全空き家」と認定された空き家です。
家が特定空き家、管理不全空き家に認定されると、固定資産税と都市計画税は翌年から表2.のように跳ね上がります。

表2. 特定空き家、管理不全空き家に認定された場合の翌年の税額比
固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地(200m2以下) 6倍 3倍
一般住宅用地(200 m2超え) 3倍 1.5倍

では、特定空き家・管理不全空き家とは一体どのようなものなのでしょうか。
次にご説明します。

2特定空き家とは

特定空き家とは次のような空き家のことです。
(2015(平成27)年5月26日施行「空家等対策の推進に関する特別措置法」第2条第2項より)

◯ そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
◯ そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
◯ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
◯ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態


近隣の住民に迷惑になることばかりですね。
周辺の環境に悪影響を及ぼすと判断されると、税金が高くなるということがわかります。
周囲に迷惑をかけて特定空き家に認定される前に、空き家の対策をすることが大切です。

3管理不全空き家とは

一方、管理不全空き家とは次のような空き家のことです。
(2023年(令和5)12年月13日施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法」第 13 条第1項より)

◯ 適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空き家

政府は2023年より、空き家対策を強化する一環として特定空き家になりそうな段階の空き家=管理不全空き家をも警戒する方針をとりました。空き家問題が一層深刻になりつつあり、政府が事態をより重く見ている証拠といえます。


特定空き家・管理不全空き家に認定されるまでの流れ

特定空き家に認定されるまでの経緯は、次のような流れになります。
(以下、「空家等対策の推進に関する特別措置法」を「空家法」と記載)

1. 近隣住民から市町村に苦情が行く
2. 市町村の担当課が状況を確認
3. 担当者が空き家の所有者へ連絡
4. 所有者に対して空き家改善の助言・指導(空家法第22条第1項)
5. 改善が見られない場合は改善の勧告(空家法第22条第2項)
6. 改善が見られない場合は改善するように命令(空家法第22条第3項)
7. 改善が見られない場合は特定空き家に認定
8. 「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」適用対象外になる(税金が上がる)
9. 行政により強制的に空き家の解体・除去 (行政代執行)が行われる(空家法第22条第9項)

管理不全空き家に認定されるまでの経緯は、次のような流れになります。

1. 近隣住民から市町村に苦情が行く
2. 市町村の担当課が状況を確認
3. 担当者が空き家の所有者へ連絡
4. 所有者に対して空き家改善の助言・指導(空家法第13条第1項)
5. 改善が見られない場合は改善の勧告(空家法第13条第2項)
6. 改善が見られない場合は管理不全空き家に認定
7. 「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」適用対象外になる(税金が上がる)

最終的に特定空き家や管理不全空き家に認定されるまでには、何段階かのステップがあります。
その段階ですぐに改善すれば税金が高くなることは避けられます。
なるべく早めに問題を解決すべく手を打ちましょう。


特定空き家や管理不全空き家に認定されないためには?

特定空き家・管理不全空き家に認定される前に取ることができる対策としては、次のような方法があります。

1空き家を売却する
2賃貸物件として貸し出す
3更地にして売却する
4国や引き取り業者に引き取りを依頼する
5管理業者に管理を依頼する
6空き家バンクに登録しておく

1つひとつ詳しく見ていきましょう。

1空き家を売却する

空き家対策として、空き家を売却するという方法があります。
売却すれば売却利益としてまとまった資金が手に入り、固定資産税・都市計画税や修理費用などの維持費もかかりません。
売却利益に課される税金(譲渡所得税)に対しては次のような特例もあるので、適用条件に当てはまる場合は是非利用しましょう。

①譲渡所得税率の物件所有期間による軽減(物件所有期間5年超で譲渡所得税率軽減)
②マイホームを売ったときの特例(譲渡所得から最大3,000万円差し引ける)
③マイホームを売ったときの軽減税率の特例(物件所有期間10年超で譲渡所得税率がさらに軽減)
④特定のマイホームを買い換えたときの特例(2025年12月31日までに新しいマイホームに住み替えた場合、譲渡所得税を将来に繰り延べて納税可)
⑤被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(譲渡所得から最大3,000万円差し引ける)

2賃貸物件として貸し出す

空き家対策として、賃貸物件として貸し出すという方法があります。

賃貸物件として貸し出せば空き家を有効活用でき、家賃収入も入ります。
入居者が住むことで換気や掃除がされるので家の傷みも遅くなります。

ただし固定資産税・都市計画税や修理費用がかかり、1度賃貸物件にすると相続物件の場合に後から売却しようとしても⑤「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 は利用できなくなるので注意しましょう。

最終的に特定空き家や管理不全空き家に認定されるまでには、何段階かのステップがあります。
その段階ですぐに改善すれば税金が高くなることは避けられます。
なるべく早めに問題を解決すべく手を打ちましょう。

3更地にして売却する

空き家対策として、更地にして売却するという方法があります。
家があまりにも古びてしまい建物付きだと売れない場合は、解体費用がかかりますが更地にしてから土地だけを売却しましょう。
更地にしてから売却しても、相続で取得した不動産なら⑤「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は利用可能です。
しかし1度でも駐車場などのように賃貸物件にすると適用できなくなるので気をつけましょう。

4国や引き取り業者に引き取りを依頼する

更地の買い手が現れない場合は、有料になりますが、国や引き取り業者に引き取ってもらうという手段もあります。
国の引き取り制度は「相続土地国庫帰属制度」といい、2023年4月27日にスタートしました。
相続した土地限定の制度で、建物が建っていると申請できません。
費用は審査手数料として一筆当たり14,000円、引き取る負担金として宅地の場合は面積に関わらず20万円となっています。
引き取り業者は相続で取得した土地でなくても対応してくれ、建物が建っていても引き取り可、境界が曖昧でもOK、など引き取り条件も国よりは厳しくありません。
ただし引き取る負担金は国に比べて高い傾向があります。

5管理業者に管理を依頼する

空き家対策として、管理業者に管理を依頼するという方法があります。
空き家を管理する専門業者なら、費用はかかりますが、責任をもって空き家の管理をしてくれるでしょう。
庭の手入れや換気・掃除など予算に応じたプランを選べ、安心して任せられるので、建物や土地を売却したくない場合は検討してみましょう。

6空き家バンクに登録しておく

空き家対策として、空き家バンクに登録しておくという方法があります。
空き家バンクとは、空き家活用を目的として空き家と空き家を利用したい人をマッチングさせるサービスです。
地方公共団体主催のサービスと民間企業主催のサービスがあります。
登録しておけばもしかして利用したいという人が現れて、空き家を上手く活用してくれるかもしれません。


Q&A
Q もし、特定空き家や管理不全空き家に認定されたらどうしたらよいですか?

A

特定空き家や管理不全空き家に認定されたとしても、行政の助言や指導に従い空き家の改善を行えば認定は解除されます。
自治体によってはリフォーム費用や解体費用の補助制度もあるので、担当窓口やホームページなどで確認してみましょう。

Q 家を相続したのですが、固定資産税の支払いや売却などが煩わしいので放置しています。
不都合はありますか?

A

相続した不動産の所有権を移転する相続登記は義務であり、所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権移転登記を申請しなければなりません。
相続登記をしないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記の義務化は2024(令和6)年4月1日から始まりましたが、それより前に相続した不動産も相続登記がされていないものは義務化の対象になります。

Q 空き家を解体して更地にしておけば税金は上がりませんか?

A

逆に、さらに上がります。
①空き家+土地の場合 → 空き家の固定資産税・都市計画税+土地の固定資産税・都市計画税(住宅用地の特例適用あり)
②更地のみの場合 → 土地の固定資産税・都市計画税(住宅用地の特例適用なし)
となり、②のように更地にすると建物に対する固定資産税はなくなりますが、土地への「住宅用地の特例」が適用されなくなるため、結果として固定資産税の総額は①の空き家+土地の場合よりも増えてしまいます。(税額:②>①)
空き家をそのまま残しておくケースが減らない一因として、建物があった方が税制的に有利なことも挙げられます。

Q 特定空き家や管理不全空き家に認定された場合、罰金はあるのですか?

A

特定空き家に認定されるまでの流れ6.の段階で、「市町村長の命令」がされてもなお改善に至らずに違反した場合は50万円以下の過料が課されます。(空家法第30条第1項)

まとめ

空き家を放置しておいて「特定空き家」「管理不全空き家」に認定されると、住宅用地に適用されていた特例が受けられなくなります。
その結果、固定資産税は今までの税額の6倍もしくは3倍、都市計画税は3倍もしくは1.5倍となり、大幅に税額がアップしてしまいます。
「特定空き家」に認定される経過で過料も取られ、周囲にも迷惑をかけることとなるので、空き家は百害あって一利なしです。
今まで住んでいたマイホームから新しい家に住み替える場合、相続で取得した場合のいずれにおいても、空き家として放置せずに早めに対処しましょう。

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リビングライフは1990年の創立以来、「住まいから始まる幸せの生涯設計を提案する」という理念を掲げ、お客さまと共に歩んでまいりました。これからも土地家屋の売買や賃貸物件の仲介、節税や資金計画へのアドバイスなど、不動産に関するサポートを通じて皆さまに寄り添い、ニーズに応えられる会社であり続けたいと考えております。 大田区・品川区を中心とした東京城南エリア、川崎市・横浜市を中心にした神奈川エリアでいつでもご連絡をお待ちしております。

関連URL

国土交通省「社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 空き家対策小委員会とりまとめ~今後の空き家対策のあり方について~」:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001586071.pdf

国土交通省「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712030.pdf

国土交通省「土地の保有による税制」:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000073.html

空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号):https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC1000000127

管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン):https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001712340.pdf

行政代執行法:https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000043

国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき):https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm

国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm

国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3355.htm

国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm

法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html

法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html

         

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