不動産売却にかかる手数料とは?仲介手数料の計算方法について

不動産の売却には、手数料や税金などの様々な費用がかかります。
これら諸費用は一般的に売却価格の4~6%ほどとなり、売却で得られる利益は売却価格から諸費用を差し引いた額になります。そのため、マネープランを立てるには諸費用の目安を把握しておくことが大切です。
そこでこの記事では、諸費用の大部分を占める仲介手数料をはじめ、不動産売却にかかる様々な”手数料”について解説していきます。
手数料にはどんなものがあるのか?どのくらいかかるのか?といった疑問にお答えしていきますので、皆さまの暮らしに役立てていただければ幸いです。
目次
不動産売却にかかる手数料には何がある?

不動産の売却には次の手数料が生じます。
1仲介手数料(不動産会社に支払う手数料)
2印紙税(売買契約書作成のために支払う費用)
3住宅ローンの一括返済手数料(住宅ローンが完済されていない場合)
4登記費用(抵当権が抹消されていない場合の抵当権抹消費用)
各手数料の費用目安と支払いタイミングを表1.に示します。
手数料 | 費用目安 | 支払いタイミング |
---|---|---|
仲介手数料 | (売却価格 × 3% + 6万円)+消費税 ※売却価格400万円以上の場合の速算式 |
買契約の締結時と物件の引渡し時 (支払額の半額づつを2回に分けて) |
印紙税 | 2~6万円 ※売却価格1,000万円超~1億円の場合 |
売買契約書の作成時 |
住宅ローンの 一括返済手数料 |
3万3,000円ほど | 融機関へのローン返済時 |
登記費用 (抵当権抹消費用) |
登録免許税1,000円+司法書士への申請手数料 1万5,000円ほど |
法務局での登記時 |
売却にかかる諸費用としては、この他に譲渡所得税や測量費・建物解体費・ハウスクリーニング代などがかかりますが、今回は”手数料”に特化してお伝えしていきます。
それでは1つひとつ詳しく見ていきましょう。

1仲介手数料
仲介手数料は不動産会社に買主探しを依頼後、売買契約が成立した際に支払います。
取引を仲介した成功報酬のようなものであり、複数の不動産会社に依頼していた場合は成約に至った不動産会社のみが対象となります。
仲介手数料の釣り上げが行われないように国土交通省は上限額を定めており(※1)、不動産会社は上限額以下であれば特に規定なく仲介手数料を設定できます。
ただし自社の利益を最大限に図れるように、多くの不動産会社が手数料を上限額に設定しています。
※1 国土交通省「宅地建物取引業法46条第1項」により「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」で規定
■ 仲介手数料の上限額
仲介手数料上限額は売却金額に応じて次のように変わります。
売却金額(税抜き)のうち
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
---|---|
1200万円以下の部分 | (売却価格×5%)+消費税10% |
2200万円から400万円以下 | (売却価格×4%+2万円)+消費税10% |
3400万円を超える金額 | (売却価格×3%+6万円)+消費税10% |
仲介手数料の上限額は、売却金額(税抜き)のうち200万円以下の部分には税率5%を、200万円超~400万円以下の部分には税率4%を、400万円超の部分には税率3%をかけた合計額に消費税10%を足した額となります。
■売却価格が800万円の場合の仲介手数料の計算

売却価格を3つに分割して計算するのが面倒なので、次のように 1 式を変形させた速算式 1 ’を使って、簡単に仲介手数料の目安を算出することができます。

■売却価格が800万円の場合を速算式で計算すると

このように、 1 式でも 1 ’式でも結果は同じになるので、簡単に計算したい場合は速算式を使うと便利です。
■売却価格が3000万円の場合の仲介手数料は以下の計算となります。

不動産会社が上限額いっぱいで仲介手数料を設定していた場合は、3,000万円から105万6,000円が差し引かれ、そこからさらに、印紙税その他の手数料、譲渡所得税や測量費・建物解体費などの諸経費を引いた額が手元に残るお金となります。
以下に、不動産の売却価格別に仲介手数料の上限額をまとめました。不動産を売却する際にぜひお役立てください。
売買価格 | 仲介手数料(税込) |
---|---|
800万円(特例適用) | 33万円 |
1,000万円 | 39.6万円 |
2,000万円 | 72.6万円 |
2,500万円 | 89.1万円 |
3,000万円 | 105.6万円 |
4,000万円 | 138.6万円 |
5,000万円 | 171.6万円 |
1億円 | 336.6万円 |
もし、不動産会社から上限額を超えた仲介手数料を要求されたら、その不動産会社は法外な値段を請求していることになります。
取引パートナーとして信頼できないので、契約を結ぶのはストップしましょう。
■ その他の注意点
契約や支払いの際には次の点に留意しておきましょう。
◎800万円以下の空家・空地・空室の場合、仲介手数料の上限が高くなる
令和6年(2024年)7月1日の法改正から、800万円以下の空家・空地・マンションの空室などの物件に限り、仲介手数料の上限が30万円(税別)になりました。
これは、不動産会社にとって赤字になりやすい空家物件の流通支援を目的としており、上限額は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額 第七 低廉な空家等の売買又は交換の媒介における特例」により定められています。
このため、例えば売却価格400万円の物件なら本来は仲介手数料の上限額は18万円であるはずが、30万円(800万円の物件の上限額と同額)までの請求が可能となりました。
空家・空地・空室の仲介手数料引き上げについては、事前に不動産会社から依頼者へ説明をして合意を得る必要があります。
もし説明のないまま仲介手数料を引き上げられたら、合意していない旨を担当者に伝えましょう。
■ 仲介手数料の支払いタイミング
仲介手数料の支払いタイミングは、売買契約の締結時と物件の引渡し時の2回です。
どちらかのタイミングでまとめて一括払いしても構いませんが、契約締結時点ではまだ取引が完了していないことから、半額ずつ2回に分けて支払うのが一般的です。

2印紙税
印紙税は売買契約書に対して課される税金で、図3.のような国が発行する収入印紙という証票を書類に貼って納税します。収入印紙は1円~100,000円まで全31券種あり、法務局や郵便局で購入できます。使用頻度の高い200円の収入印紙であればコンビニでも販売しています。

出典:国税庁 収入印紙の形式改正について https://www.nta.go.jp/information/release/pdf/inshi_kaisei.pdf
印紙税の納税義務者は印紙税法第3条により「課税文書の作成者」となっています。
そのため通常は同じ内容の契約書を2部作成し、売主・買主それぞれが1部の分ずつ印紙税を負担します。
印紙は不動産会社が準備していることが多いので、売主は売買契約書の作成日に現金を用意しておき担当者へ支払うようにしましょう。
売買契約書の印紙税は契約金額により表3.のように税額が変わります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
※現在、印紙税には軽減税率が設定されています。不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、2014年(平成26年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までの間に作成される軽減措置の対象となる契約書は、表の「軽減税率」欄のとおりになります。
3住宅ローンの一括返済手数料
住宅ローンがまだ残っている場合は、ローンを完済するまで物件を売却できません。
売却のために返済予定を繰り上げて残額を一括返済するには、金融機関への事務手数料が生じます。
事務手数料の金額は金融機関によっても異なりますが、目安は33,000円ほどです。
窓口やインターネット経由、書類郵送のような返済方法でも事務手数料は違ってくるので、詳細は金融機関のホームページや住宅ローンの規約、融資の担当者に確認しましょう。
どうしても住宅ローンが完済できない場合は任意売却という選択肢もあります。
任意売却とは、金融機関に許可を取り、条件を調整して不動産を売却することです。
弊社は弁護士や税理士、司法書士とも連携しておりますので、任意売却を検討している際は是非ご相談ください。
4登記費用
不動産登記とは、財産の所有権がどこにあるのかを明確にする手続きのことです。
不動産の売却に関係する登記は抵当権抹消登記と所有者移転登記の2つであり、それぞれ国に納める登録免許税と司法書士への申請手数料がかかります。
■ 抵当権抹消登記
抵当権とは、金融機関が持つ「不動産を担保として差し押さえることのできる権利」のことです。
住宅ローンを組む際に設定され、抵当権が付いている物件は住宅ローンを完済しないと売却できません。
抵当権抹消登記とは、住宅ローンを完済した後に行う、登記簿から抵当権を消す手続きのことです。
抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。
戸建て住宅では土地と建物バラバラに抵当権が設定されていることが多く、その場合は2,000円が必要になります。
登記手続きは自分でもできますが、必要書類の準備・作成・提出などに手間がかかるため司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士に登記を依頼した場合の手数料は、地域や不動産の価値によっても異なりますが1万5,000円ほどが目安となります。
抵当権の効力は住宅ローンを返し終わると消えますが、登記簿上の記載は抵当権抹消登記をしない限りずっと変わりません。
記載がそのままであると第三者(買主)からは物件にまだ抵当権があるように見えて敬遠されてしまうので、抵当権抹消登記は放置せずにきちんと行いましょう。
■ 所有権移転登記
所有権移転登記とは、不動産の所有者が代わった時に所有権を明確にする手続きのことです。
所有権移転登記の登録免許税額は、次の式で表されます。

ただし所有権移転登記の登録免許税は、本来は売主・買主の双方が分担することになっています(※3)が、慣例として通常は買主側が全額負担します。そのため一般的には売主は考えなくてもよい費用となっています。
※3 「登録免許税法第3条」により規定
売却にかかる手数料の計算例
最後に、売却にかかる手数料が売却価格のどのくらいの割合を占めるのかを具体的に計算してみましょう。
例えば、物件の売却前に住宅ローンを一括返済、売却価格は5,000万円(税抜き)であったとします。
この場合、各手数料は
1.仲介手数料 費用(5,000万円 × 3% + 6万円)+消費税10%=171万6,000円
2.印紙税:2万円
3.住宅ローンの一括返済手数料:3万3000円ほど
4.抵当権抹消登記の登録免許税:1,000円
5.司法書士への登記手数料:1万5,000円ほど
であり、合計178万5,000円ほどとなります。これは売却価格5,000万円の3.57%ほどです。
他にも、不動産を売ったときに利益が出た場合は、確定申告をし、譲渡所得税という税金(所得税、住民税)を支払います。
売却にかかる諸費用全般を考えると、引越し代や測量費、建物解体費、ごみの処分費なども加わってきます。
そのため、利益から差し引かれる金額は最終的に売却価格の4~6%ほどになることが一般的です。
不動産売却では、上記のようにさまざまな費用がかかります。それぞれの費用は、売却依頼をする不動産会社、売却価格や利益などによって異なります。支払い時期もバラバラですので、スムーズな売却を行うためには、不動産会社に早めに相談をするとよいでしょう。
リビングライフでは、豊富な売却実績と経験豊富なスタッフが多数在籍し、無料の相談窓口をご用意しておりますので、ぜひお気軽にご活用ください。
Q&A

Q 売買契約をして仲介手数料を支払った後に、買主側の住宅ローンがおりずに契約が白紙に戻ってしまいました。 仲介手数料は戻ってきますか?
A
はい。取引は行われていないので仲介手数料は返金されます。ご安心ください。
Q 物件の「仲介」ではなく「買取」の場合でも仲介手数料は発生しますか?
A
買取の場合は仲介ではないので仲介手数料は発生しません。
ただし買取は管理費やリフォーム代が不動産会社にかかるため、その分査定額が低くなりがちなので気をつけましょう。
Q 媒介契約の方式(専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約)によって仲介手数料は変わりますか?
A
原則的にはどの契約方式でも変わりません。
ただし仲介手数料は上限額以下であれば特に規定がないので、不動産会社によっては1社への縛りが強くなる「専属専任>専任>一般」の媒介契約の順で割引を受けられる可能性が高くなります。
しかし仲介手数料には広告費や人件費などの費用が含まれるので、一概に安ければよいとも限りません。 もし割引交渉をする場合は、宣伝効果や担当者への印象なども考えてから行いましょう。
Q 仲介手数料の上限額を計算する時の売却価格は税抜きですか?それとも税込みですか?
A
消費税を含めない、税抜きの売却価格で計算します。
まとめ
この記事では、不動産の売却で生じる手数料について解説いたしました。
不動産の売却では、売却金額から手数料を含めた諸経費を差し引いた金額が利益となります。
売買の際は、生じる手数料を予め把握しておくと安心して取引を進めやすいでしょう。
特に仲介手数料は売却にかかる手数料の大部分を占め、利益に直結します。
価格も上限額以下であれば不動産会社ごとに自由に設定できるため、できるだけ安く抑えたいところです。

しかし物件の販売活動費は仲介手数料から賄われるので、あまりにも低く設定されていると肝心の売却が疎かになってしまうリスクがあります。
不動産会社を選ぶ際には、仲介手数料の安さに捉われず誠実な対応や今までの売却実績などを重視しましょう。
もし不動産の売却においてご不安な点がございましたら、是非お気軽に弊社にご相談ください。
少しでも皆さまが安心してお取引できるように、また有利な条件を実現するために尽力させていただきます。
リビングライフは1990年の創立以来、「住まいから始まる幸せの生涯設計を提案する」という理念を掲げ、お客さまと共に歩んでまいりました。
これからも土地家屋の売買や賃貸物件の仲介、節税や資金計画へのアドバイスなど、不動産に関するサポートを通じて皆さまに寄り添い、ニーズに応えられる会社であり続けたいと考えております。
大田区・品川区を中心とした東京城南エリア、川崎市・横浜市を中心にした神奈川エリアでいつでもご連絡をお待ちしております。
関連URL
宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号):https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176#Mp-Ch_5-Se_1
国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001750229.pdf
国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(通達)の改正(令和6年7月1日施工):https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001750144.pdf
公益財団法人・不動産流通機構「REINS Market Information」:http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
登録免許税法:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=342AC0000000035
印紙税法:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=342AC0000000023