「確定測量」とは何か?境界線のあるなしで変わることや必要な費用・注意点を徹底解説

土地の売却では、「その土地の境界が明確であるかどうか」が重要となります。周囲との境界や面積がはっきりしていない土地は購入後のトラブルが予想されるため、買い手がつきにくくなるからです。
そのため、売却前に境界が明確になっていない土地は、まず確定測量を行い買主側が安心して取引に臨めるようにする必要があります。そこでこの記事では、確定測量とは具体的にどのようなものなのか、かかる費用や期間、注意点などを解説していきます。
不動産取引は大きな金額が動きます。取引が終わってから後悔しないためにも、確定測量のポイントを把握して是非土地売却を成功させましょう。

確定測量とは

確定測量とは所有地の境界を明確にする測量の1つで、色々な測量の中で最も信頼性が高いとされています。
測量作業は土地家屋調査士が専門的に行い、土地所有者は測量後に作成される確定測量図により自分の権利を証明できるようになります。

宅地や戸建て住宅の売買時には、境界トラブルを未然に防ぐために売主から買主に確定測量図を引き渡すことが一般的です。

1確定測量の特徴

確定測量には2つのポイントがあります。
1つは、土地の周囲全ての境界が決まらないと確定測量図を作成できないことです。
ここでいう「全ての境界」とは、隣接地のみでなく道路を挟んだ向かい側の土地も含みます。
そしてもう1つは、境界の決定は関係する土地所有者の立会いのもとで行われるということです。
そのため確定測量図を作成するには、図1.でいうと隣接地の所有者D・E・F・Gに加え、道路向かいの土地の所有者A・B・Cの合意も必要となります。

図1. 確定測量において合意が必要となる所有者

上記2点を満たさなければならないため確定測量実施のハードルは高くなりますが、反面、一度定めた境界はその後揉める要素がなくなります。確定測量を行うことは、取引に買主側への安心というプライスレスな価値を付加することができるでしょう。
なお、土地の境界において、私有地との境界を民々境界、道路など官有地との境界を官民境界と呼びます。
民々境界と官民境界では確定測量時にかかる費用や期間が異なるので注意しましょう。

2確定測量が必要な売買

確定測量は土地の売買において非常に大切なプロセスではありますが、法律で義務づけられているわけではありません。
中には行わなくてもよいケースも存在します。
一体どのような場合に確定測量を実施した方がよいのか、逆にどのような場合は必要ないのか、詳しくみていきましょう。

 売買の2つの契約方式

不動産取引には実測売買と公簿売買という2つの契約方式があります。
実測売買は土地の正確な面積を確定測量し、その面積によって土地価格を精算する方法です。
価格は土地の実際の広さに対応しているので、後から「損した、騙された」というようなトラブルは生じにくいでしょう。
一方、公簿売買は法務局の登記簿に記載されている面積をもとに土地価格を決めます。
登記簿の面積は実際の面積と異なる場合があり、もし実際の面積が登記簿の数値よりも狭かったことが後々発覚すると金銭トラブルに発展するリスクがあります。
そのため、マイホームの売買では多くの場合実測売買が好まれます。
実測売買と公簿売買のメリット・デメリットを表1.に示します。

表1. 実測売買と公簿売買のメリット・デメリット
メリット デメリット
実測売買 ・土地の境界や面積が確定することで、
トラブルを未然に防げる
・確定測量の費用がかかる
・確定測量に時間がかかる
公簿売買 ・土地の測量費がかからない
・土地の測量に対する時間がかからない
・登記簿に記載されている面積と実際の
 面積が違うことがあり、問題が生じるリスクが高い

2つの契約方式の違いを紹介したところで、次に確定測量をした方がよいケース・しなくてもよいケースの例を具体的に挙げていきましょう。

 確定測量をした方がよいケース

確定測量をした方が良いケースは次の通りです。

宅地の売却 (実測売買)
戸建て住宅の売却(実測売買)

宅地や戸建て住宅のように独立性が高い物件は、境界が曖昧なままでは買主に敬遠されてしまいます。
そのため土地付きのマイホームを売却する際には、確定測量を行う実測売買が選択されることが一般的です。

 確定測量をしなくてもよいケース

確定測量をしなくてもよいケースは次の通りです。

農地や山林の売却(公簿売買)
マンションの売却
既に確定測量図が作成されている場合
不動産会社による直接買取など、買主が確定測量図がなくてもよいと了承している場合

農地や山林のように広大な割に価格が低く、面積の誤差による価格の差よりも測量費の方が高くなるような場合は、公簿売買が採用されることが多く確定測量は要りません。
マンションなどの集合住宅も大抵は新築時に土地の境界を確定しているので、新たな確定測量は不要です。
また宅地や戸建て住宅でも、既に確定測量図が作成されている場合は新たに確定測量を行わなくても大丈夫です。

測量図の種類

測量図には、確定測量図の他にも現況測量図、地積測量図といったものがあります。
確定測量図はこの中で最も信頼性が高い測量図であり、未定の境界がある場合は作成できません。

各測量図の特徴は次の通りです。

●現況測量図⋯塀やフェンスなど、現況の区画をもとにした測量図。
関係する土地の所有者と境界確認がされているとは限らない。
●地積測量図⋯法務省令の規定により作成され、法務局に保管されている測量図。
隣人同士で意見が相違した場合、境界が未定のまま作成されることもある。
●確定測量図⋯関係する土地の所有者立会いのもとで決定した境界を記載している測量図。
境界が未定の場合は作成できない。

各測量図の違いを表2. に示します。

表2. 各測量図の違い
信頼性 必要とする場面 取得依頼先 取得費用 取得期間
現況測量図 ☆☆☆ 家の建築時
(ハウスメーカーが大まかな
 面積を把握する際に使用)
測量会社 10~20万円ほど 2~3ヶ月ほど
地積測量図 ☆☆☆☆ 土地の登記申請時 法務局 450円 1時間ほど
確定測量図 ☆☆☆☆☆ 実測売買時 測量会社 35~80万円ほど 1ヶ月半~半年ほど

実測売買時には確定測量図が必要であり、他の測量図では代替できません。
各測量図は信頼性や取得費用が異なるため、目的に合わせて適切な測量図を使用しましょう。

確定測量図がないとどうなるのか?

さて、確定測量図が手元にないと、一体どのような不都合があるのでしょうか。
買主に起こり得るトラブルとして具体例を3つ挙げます。

【ケース1】 現況測量図と確定測量図が異なっていた

現況測量をしただけで家を建て、後から確定測量を実施して実際の土地面積が現況測量図よりも狭かったことが判明

この場合は建物の建蔽率(※1)や容積率(※2)が基準をオーバーしてしまう可能性があり、もし超えていると建物は違法建築物とみなされます。基準値オーバーが建物の建築前に発覚すると建築許可が下りないので、そもそも家を建築することができません。従って、家を狭く小さくするプランを練り直すことになります。建築中に発覚すると、せっかく建築していても取り壊さなければなりません。そのため、多額の建築費用が無駄になってしまいます。建築後に発覚すると、最悪の場合は使用禁止や改築などの措置が取られます。
違法建築物はその他にも、住宅ローンが組めないので売却時に市場価値が低くなる、といったデメリットが発生します。

※1 建蔽率…敷地面積に対する建築面積の割合。火災時の延焼防止や風通し・日当たり・景観の確保が目的。
※2 容積率…敷地面積に対する延床面積の割合。人口過密の防止が目的。

【ケース2】 登記簿と確定測量図が異なっていた

登記簿をもとに公簿売買を行い、後から確定測量を実施して実際の土地面積が登記簿よりも狭かったことが判明

土地価格は、確定測量図をもとにした実測売買では単位面積辺りの価格を面積分清算しますが、登記簿をもとにした公簿売買では1筆(※3)に対する値段として考えられます。そのため公簿売買の場合、後から土地面積に差異があり狭いことが発覚しても差額の払い戻しはされず、支払い価格が割高になってしまいます。

※3 筆…登記簿における土地を数える単位。記載されている土地には1筆毎に地番が割り当てられる。

【ケース3】 隣人間の境界トラブル

土地の境界が曖昧で、隣人がブロック塀や木の枝などの越境を認めない

越境物が自分の所有地にはみ出していて迷惑を被っていても、確定測量図で境界を証明できないと相手に正当性を主張できません。 感情的に揉めると近隣の関係にもヒビが入り、暮らしにくくなってしまう恐れがあります。

このように宅地や戸建て住宅を売買する際には、新しい所有者が正確な境界や土地面積を把握していないと後々トラブルが生じるケースがあります。売主・買主がお互いに納得のいく取引をするためにも、売主は確定測量を実施して買主に安心を保証することが大切です。

確定測量にかかる費用

確定測量にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。
関係する土地の所有者数や土地の状況でも変わりますが、一般的な戸建ての敷地100 m2での大体の目安は次のようになります。

官民査定あり → 60~80万円ほど
官民査定なし → 35~45万円ほど

道路などと接している官民境界が含まれていると、費用は高くなる傾向にあります。
多少の費用はかかりますが、後顧の憂いなく取引を行うための安心料・必要経費として考えましょう。

なお、もし弊社と専属専任媒介契約(1社とのみ契約を結ぶ契約方式)を締結していただきますと、次章で紹介する確定測量の流れ3.の仮測量の費用を弊社で負担いたします。

確定測量の期間と流れ
1確定測量にかかる期間

確定測量にかかる期間も気になるところです。
こちらも関係する土地の所有者数や土地の状況で変わりますが、一般的な戸建ての敷地100 m2での大体の目安は1ヶ月半~半年ほどになります。

 関係する土地の所有者が残り1人で民々査定の場合 → 1ヶ月半ほど
 官民査定が完了しておらず関係する所有者が多い → 半年ほど

道路などの官民境界が含まれていると、期間が長くなる傾向にあります。
売却時期に希望がある場合は、早めにスケジュールを調整しておいた方がよいでしょう。

2確定測量の流れ

確定測量の流れは次のようになります。

1. 土地家屋調査士に依頼
2. 資料収集、近隣への挨拶
3. 仮測量
4. 境界の立会い
5. 本測量
6. 確定測量図の作成・署名・捺印

確定測量は土地家屋調査士が在籍する民間の測量会社へ依頼します。
依頼時は土地の”地番”を伝えるようにしましょう。
地番とは、登記簿に記載されている土地1筆ごとに法務局が割り振った番号で、住所とは異なることがあります。
地番は固定資産税の「納税通知書」「登記済証」「登記識別情報通知」などで確認できます。
法務局に電話をして照会することも可能です。
依頼があった後、土地家屋調査士は法務局で「公図」「登記済証」「登記識別情報」「登記簿謄本」などの資料収集を開始します。手元に「筆界確認書」「越境の覚書」などがある場合は提出しましょう。
筆界確認書とは、境界に接している土地の所有者両方が合意した上で作成する境界の証明書のことです。一部の境界に対してでも筆界確認書があれば、その境界は過去に確定していることになるので確定測量をしなくてもよくなります。
越境の覚書とは、越境物の将来的な解決方法を約束した合意書のことです。
仮測量、境界の立会い、本測量を終えたら土地家屋調査士は確定測量図を作成します。
確定測量図には境界ごとに筆界確認書が2通付いており、関係する土地の所有者と共に署名・捺印したものをお互いに1通ずつ保管します。
確定測量図を作成後、登記簿の面積が確定測量図と異なっていて登記簿を正確な情報に訂正したい時は、別途「地積更正登記」の申請が必要になります。
登記簿と確定測量図の面積が違っていても不動産の取引自体に影響はありませんが、この機会に修正しておいてもよいでしょう。

確定測量の注意点

確定測量を実施する際には注意点があります。
土地の売買を成功させるためにも、以下の2点に気をつけましょう。

1近隣の住人と良好な関係を築いておく

確定測量を円滑に進めるためには、普段から近隣の住人と良好な関係を築いておくことが大切です。
確定測量は関係する土地の所有者に、立会いや署名捺印で協力を仰ぐかたちとなります。
近隣住人の立場から考えると、日頃の交流がない中で突然頼まれても困惑して快く引き受けられない場合もあるでしょう。
境界トラブルで争わなくてすむように、ご近所付き合いを友好的に保ち揉める要素は減らしておきましょう。

2時間に余裕をもって依頼する

物件の売却を慌てずに進めるためには、時間に余裕をもって確定測量を依頼しておくことが大切です。
確定測量には短くて1ヶ月半ほど、官民境界の数や関係する土地の所有者数によっては半年ほどと、月単位の時間がかかります。
関係する土地の所有者との間で境界の決着がつかなかったり、所有者が遠方に住んでいて立会い日程の調整がつかなかったりと測量期間が想定よりも長びく可能性もあります。 
そのため、物件を希望のタイミングで売却したい場合には早めに準備しておいた方が安心です。

Q&A
Q境界トラブルが当事者の話し合いで解決しない場合はどうすればよいのですか?

A

筆界特定制度を活用しましょう。
土地の所有者が法務局の筆界特定登記官に申請することで、元々の筆界を明らかにする筆界特定が行われます。
申請手数料は境界を挟んだ両土地の合計価格の0.02%ほどであり、裁判よりも時間と費用をかけずに実施できます。
筆界特定制度はハードルが高いという場合は、在住地域の公的機関の無料サービスを利用したり土地家屋調査士に相談したりということもできます。

Q確定測量を実施して境界が明確になった後に、
越境が判明した時はどうすればよいのですか?

A

速やかに越境物を退かしてもらいましょう。
越境期間が長くなると時効が成立し、越境が法的に認められることがあります。

 越境に悪意や過失がない場合 → 10年以上で時効(短期取得時効)
 越境に悪意や過失がある場合 → 20年以上で時効 (長期取得時効)

もし越境物をすぐに退けることが難しい場合は短期取得時効や長期取得時効も踏まえ、越境の覚書を締結して将来的に退けてもらうことを約束しましょう。

Q確定測量図に有効期限はありますか?

A

有効期限はありません。
1度作成したら失くさないよう大切に保管しておきましょう。

Q何故、登記簿の土地面積が正確でない場合があるのですか?

A

まだ測量技術が進歩していなかった時代や、自己申告で届け出の基準が緩かった頃の記録がそのまま記載されていることがあるからです。

Q立会いは土地の所有者本人がしなければならないのですか?

A

基本的には本人が行います。
どうしてもやむを得ず代理人を立てる場合は、委任状が必要となります。

Q土地を共同で所有している場合は全員が立会わなければならないのですか?

A

基本的には全員で行います。
どうしてもやむを得ず代表者だけとなる場合は、委任状が必要となります。

Q立会いや測量時に建物の中に入ることはありますか?

A

基本的にはありません。
建物内を通らないと境界が確認できない場合は、承諾を得た後に入ることもあります。

Q立会いの所要時間はどのくらいですか?

A

土地の広さや形状により変わってきます。
目安としては一筆につき10~20分ほどです。

まとめ

この記事では、確定測量とは具体的にどのようなものなのか、かかる費用や期間、注意点などを解説いたしました。
確定測量は、関係する土地の所有者立会いのもとで全ての境界を明確にする、最も信頼性の高い測量方法です。
買主側も境界が曖昧な土地を購入したくないので、確定測量が行われていない土地は市場価値が下がってしまいます。
売主・買主がお互いに安心して取引するためにも、境界がまだ確定していない宅地や戸建て住宅を売却する際には確定測量を実施しましょう。
もし不動産の売却においてご不安な点がございましたら、是非お気軽に弊社にご相談ください。

少しでも皆さまが安心してお取引できるように、また有利な条件を実現するために尽力させていただきます。
リビングライフは1990年の創立以来、「住まいから始まる幸せの生涯設計を提案する」という理念を掲げ、お客さまと共に歩んでまいりました。これからも土地家屋の売買や賃貸物件の仲介、節税や資金計画へのアドバイスなど、不動産に関するサポートを通じて皆さまに寄り添い、ニーズに応えられる会社であり続けたいと考えております。大田区・品川区を中心とした東京城南エリア、川崎市・横浜市を中心にした神奈川エリアでいつでもご連絡をお待ちしております。

関連URL

日本土地家屋調査士会連合会: https://www.chosashi.or.jp/

法務省「筆界特定制度」: https://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html

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